有馬記念の夜、埼玉スーパーアリーナで聴いた「Golden Lady」
一年前。2003年の暮れから2004年に掛けて、スティーヴィー・ワンダーは、久々のJapanLiveツアーを敢行した。そして、シンボリクリスエスが、九馬身差の圧勝で引退レースを飾った有馬記念が行われた2003年12月28日、日曜日の夕方、私は、埼玉スーパーアリーナの二階席最前列で、スティーヴィーが登場するのを、今や遅しと待ち構えていた。
大好きなスティーヴィー・ワンダーの久々のライブ。自ずと、事前に、どんな曲をやってくれるのだろうと、予め、あれこれ、予測を立てていました。序盤では、恐らく、「Higher Ground」や「Master Blaster」等の曲で、テンポ良く盛り上がるに違いない。これについては、もしかしたら、有馬記念の馬券より自信があったかも知れません。
そして、オープニングの第一曲目は、なんと、「Golden Lady」。やられた。
70年代のポップス史上に燦然と輝く「Songs In The Key Of Life」(1976)。そこへ至る通称スティーヴィーの青春三部作と称される「トーキング・ブック」(1972)「インナーヴィジョンズ」「Fulfillingsness' First Finale(ファースト・フィナーレ)」(1974)。「Golden Lady」は、その内の「Innervisions」に収録されてはいるが、数あるスティーヴィーの数あるヒット曲の中にあっては、どちらかと言えば、地味な存在。完全にノーマークでした。
しかし、改めて、久々に聴いて、決して、派手ではないけれど、知らぬ間に、魔法を掛けられたみたいに、なんか、ぞくぞくしてしまっている自分を確認したのでした。
家に帰ってから、コンサートの余韻も覚めやらぬ内に、シンセサイザーキーボードに向い、ぽろりぽろりと、「Golden Lady」のイントロを弾いてみます。いい。凄くいい。こんなに気持ちの良い曲だったとは。なんか、この、微妙な和音が移り変わっていく感じ。たどたどしい指先で、ただ、順番に押えて、なぞっていく事しか出来ない私ですが、もう、それだけで、別の世界へトリップしてしまうかのよう。
さる著名なミュージシャンが、かつて、スティーヴィー・ワンダーについて語った言葉を思い出しました。多分、パット・メセニー。
スティーヴィー・ワンダーの音楽の凄い所は、普通の人がぱっと聴いて心に残るポップなメロディーを持っていて、なおかつ、同時に、音楽の専門家が顕微鏡で覗き込むように詳細に眺めてみても、そこには驚くべき発見が見出せる所だ。
といった趣旨だったと思います。
自分が、キーボードをぽろりぽろり弾いて感じた事っていうのは、おそらく、虫眼鏡で覗いて見た程の事にもならないでしょう。けれど、ちょっと、おこがましくも、自分がパット・メセニーになって、スティーヴィーの魅力の根源に触れた気分になってしまった瞬間はとてもスリリングでした。
スティーヴィー・ワンダーは、この日本公演ツアーの合間、なんと、大晦日のK-1 Dynamite!!のメイン、ボブ・サップvs曙戦の試合前に、アメリカ国歌斉唱歌手として登場。試合前、ほんの数分間、ハーモニカでアメリカ国歌を吹いてました。TV画面に大写しになった横顔は、頬から顎に掛けて、たっぷりと肉が付いて、肌の張りもなく、容色衰え、くたびれた五十過ぎのおじさんそのもの。とても、数日前、活き活きと唄っていた同一人物とは思えません。ちょっと、がっかり。アップで映さない方が良い事もあるのですね。
肝腎のハーモニカのパフォーマンスは、なかなか。他にこんな事出来る人もいないでしょう。だけど、御大スティーヴィー・ワンダーが、何も、こんな小さな営業活動をしなくても良いのに、とも、思ってしまったのも事実。でも、良く考えたら、スティーヴィーなら、たった、数分間の登場でも、莫大なギャラが発生し、それは、決して小さい営業ではないのだと、後になって思い至りました。
大写しになった容色は衰えても、その音楽の素晴らしさは変らない。去年の今頃は、「Golden Lady」ばかり、聴いていました。
インナーヴィジョンズ [LIMITED EDITION]
Innervisions (Rmst) [ORIGINAL RECORDING REMASTERED] [FROM US] [IMPORT]
「Golden Lady」収録
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Posted by: info polri | Thursday, November 24, 2016 08:47 AM